日本精神科病院協会と日本臨床精神神経薬理学会の調査で、統合失調症の外来患者は、メタボリック症候群に当てはまる人が22.9%いることがわかりました。この数字は、2012年に行われた国民健康・栄養調査による一般の人の平均15.6%よりもかなり多いものであり、この調査によって、統合失調症の外来患者は、メタボになるリスクが高いという結果がわかりました。

 その要因の主なものとして、2つが挙げられています。1つは薬の副作用です。食欲が増して太りやすくなってしまうというものです。もう1つは、病気そのものの症状によるものだそうです。統合失調症でよく言われる症状に、幻覚や妄想などがありますが、それ以外に整理整頓や手順通りの作業ができないなど行動の障害が生じることもあります。症状により料理をするのが難しいため、ファーストフードやインスタント食品など、簡単に食べられるが高カロリーのものを食べることが多い傾向にあるということでした。こうした理由により、一般の人がなる割合よりも高くなってしまっていると見られています。

 さらに、統合失調症患者は、体の痛みを感じにくいため、ほかの病気の治療が遅れてしまうリスクがあることも指摘されています。欧米の研究では、統合失調症患者は、それ以外の人と比べて平均寿命が15年~20年短いとされていて、これを防ぐために英国では、精神科医と総合内科医との連携を積極的に進めているのだそうです。日本でもこうした取り組みが必要であると、専門の精神科医は警鐘を鳴らしています。

 一方で、栄養管理をしっかり行うことで、メタボリック症候群の割合を下げたという実績も報告されるようになってきています。このように、管理栄養士や看護師が食生活をサポートするなど、内科医との連携も含め、精神疾患の患者だけが置き去りにされることのないように、チームでサポートする医療体制がますます整備されていくことを期待していきたいと思います。