昨今、パーパス(存在意義)を掲げる企業が目立ってきています。
開設して丸10年が経ち、11年目を迎える恵比寿カウンセリングセンターとしても、当センターのパーパスは何であるか、これまでを振り返りつつ、考えてみたいと思います。

 ある企業のメンタルヘルス対策をサポートすることを目的に出発した恵比寿カウンセリングセンターの当初のパーパスは、明らかにその企業と社員のために資することでした。
だから、相談者一人一人のことだけを考えてするカウンセリングというよりは、常にその人が所属する組織の論理も見据えながらのカウンセリングだったように思います。いわば、仲介者のような立ち位置といったところでしょうか。このため、時には相談者の思いや願いよりも企業の利益が優先されることもあったと感じます。

 それがやがて次第に、法人契約企業以外の一般の方からの相談も増え出すことによって、私のカウンセリングの性質は、明らかに変わってまいりました。
初めの頃は、顔が見えないながらも、相談者の周囲にいる人のことを思い浮かべながら、どうやってその人達とうまく折り合いをつけてやっていけるようになるかに重点を置いてカウンセリングしがちだったのですが、だんだんとその意識が薄れて、いま私の目の前にいる、この相談者の願いを叶えることだけに集中しようという思いになっていきました。

 なぜ、変わっていけたのかは、いろいろな要因があると思います。社会通念上、こうあるべしと思われていた価値観の揺らぎや社会の体制、時代の風潮の変化など、考え方に影響を及ぼす変化が関係していることは多分にあると思いますが、一番の要因は、私自身の中に、「相談者のために全力で力になりたい」という思いが、確実に強まっていったからだと思います。そう思えるようになったとき、初めて周囲との調和などは二の次となって、その人がどうでありたいかに全てを注げるようになれました。

 このおかげで、以前は難しいとされた、自分を変えずに周囲を変えていくということも、なんなくアドバイスできるようになりました。
今では自身を持って、相談者が真に思う願い、気持ちを叶えるための後押しをしています。

 あれもこれもすべて、私を頼って訪れてくれた相談者のおかげです。感謝の気持ちは尽くせません。
この恩に報いることこそが、恵比寿カウンセリングセンターのパーパスだと思っております。

 これから先も、価値観の多様化や社会の風潮など、どんどん移り変わってゆくでしょう。それでもどんな時代にも、己の中に生じる矛盾や、それに伴う葛藤との苦しみは、人間である以上、ずっと無くならずに有り続けていくものだと思います。その助けになることを、これから先もずっと果たしていきたいと思います。