11月10日から16日までの一週間は、「アルコール関連問題啓発週間」です。全日本断酒連盟が11月10日を「断酒宣言の日」と定めたことから、この時期に決まったとされています。この啓発週間は、2014年6月に施行されました「アルコール健康障害対策基本法」に基づく今年初の取り組みでもあり、不適切な飲酒がもたらす様々な問題を広く知ってもらう機会になればと、内閣府などが中心となって、啓発活動を展開しています。

 そもそも不適切な飲酒にはどのような問題が潜んでいるのか?ということですが、よく言われているのは高血圧、糖尿病などの生活習慣病を招きやすいということです。パッと思いつく肝臓や胃や腸、食道など内臓に大きな影響を及ぼすだけでなく、脳にも多大な影響を及ぼすことが知られています。その代表的な障害が、アルコール中毒やアルコール依存症です。また、うつや自殺にもつながりかねないリスクもはらんでいるため、不適切な飲酒は、精神疾患の分野でも、非常に重要なテーマとなっています。

 厚生労働省の研究によると、現在、アルコール依存症の診断基準に当てはまる人は109万人と推計されていて、アルコール依存症の疑いがある人は113万人もいるとみられています。アルコール依存とは、酩酊または希望の効果を得るために、著しく増大した量が必要だったり、止めたいと思っても飲まずにいると震えるなどの不快な症状に襲われるため、止めるのが困難になってしまっている状態を指します。どんな人でも多量に飲酒していると、かかってしまう可能性があると言われています。

 では、どのくらいの量なら大丈夫なのか。健康づくりの目標を定めた厚労省「健康日本21」では、1日に、ビールなら500ml、日本酒なら1合、ワインなら200mlまでとしていて、さらに、週に2日くらいは休肝日を設けた方がいいとしています。適量と言われる、これらのお酒に含まれるアルコール量というのは20gとなり、これを1日に60g以上摂取するようになると、健康障害や社会問題を引き起こすことにつながりやすくなるとされています。

 こうした状況を踏まえ、厚労省の研究班は、アルコールによる社会的損失についても推計していますが、問題のある飲酒をすることによる労働効率低下の損失が年間1兆9700億円、アルコールの害による早期死亡者の賃金喪失で1兆762億円など、総額4兆1483億円と試算しています。これは、喫煙による社会的損失額に匹敵し、酒税収入より大きいとの指摘がなされています。

 喫煙による社会的損失は言われて久しく、受動喫煙防止法などの取り組みにより、だいぶ社会に浸透してきました。先日、ある友人に聞いた話では、とうとう社の敷地内をすべて全面禁煙にするとの通知があり、禁煙治療の支援をするなど禁煙に取り組むよう会社側が対策を強化しているとのことでした。それに比べると飲酒節制の動きは、まだ緒についたばかりといえるため、この啓発週間のような取り組みを機に、アルコールに対する意識が変化し、一人一人が適量を心がける社会になっていくよう、私も呼びかけていきたいと思いました。