東京五輪・パラリンピック組織委員会の森会長が、JOC臨時評議員会で、「女性がたくさん入っている理事会の会議は時間がかかる」と発言したことで国内外から批判を浴び、発言を撤回し謝罪する記者会見を行いました。ただその姿からは、真に反省している様子は、残念ながら全く感じられませんでした。首相まで務めた国のトップにいるような人が、重要な会議の場でこういう発言を平気でしてしまうことこそが、日本で男女平等が進まない根本の理由に思えてなりません。
日本が男女平等を推進していくため、男女共同参画社会基本法が施行されて間もなく21年目を迎えますが、実態は、世界経済フォーラムの男女格差ランキングで過去最低の121位となったり、女性の管理職の割合を3割にすると掲げた目標をあっさり断念するなど、先進国では他に類を見ないほど男女の格差が開くばかりとなっています。
それもそのはず、ちょうど管理職として活躍しだす40代後半以上の世代の人たちは、男性は総合職、女性は一般職と分けて採用する企業がほとんどで、さらに女性に対しては、「若い人たちが入ってきたら席を譲ってもらえますね?」と、数年で退職することを要求するような採用面接がまかり通っていた時代でもあるため、女性の管理職の割合なんて増やせるわけがないのです。まさに、男は仕事、女は家庭とする価値観が美徳とされていた頃で、女性が社会に出て男性と対等に渡り合うなんていうことは良しとされない、むしろ疎ましく思われる時代であったと思います。そしてその価値観は、今なお根強く、この時代を生き抜いてきた人たちに伝統として脈々と受け継がれているのではないでしょうか。その実態の証として、森会長の発言や、その場に同席していた人たちから笑いが漏れたということがあったのだと思います。
こうした価値観を変えていく、つまり男女平等とすることへの抵抗感や違和感をなくしていくのは容易なことではありません。だからこそ、一人でも多くの人が、内心の価値基準として男女平等を当たり前のこととして思えるようにしていくために、声を上げ続けていかなければならないのだと思います。辞める・辞めないの話の前に、こうした発言がなくなるまで。