数々の名著を残された、精神科医で文筆家のなだいなださんがお亡くなりになりました。なださんは、「人間は本源的に病理とともにある」との認識のもと、人間を解放するのは専門家の知ではなく、人々が生きていく中、歴史を通じて磨き上げられたコモンセンス、つまりは〝常識〟であるとの信念をお持ちになられた方でした。
私自身、なださんの書から多くのことを学ばさせていただきました。中でも代表作となる『権威と権力』は、絶望的な状況でも、希望を失わない人間を詠った作品で、同様の主義主張として、V・E・フランクルの『それでも人生にイエスと言う』がありますが、理不尽な出来事に対して日々悶々としている方には、なださんの『権威と権力』の方が、得られるものが多くあるのではないかという気がいたします。
一読者として、心よりご冥福をお祈り申し上げます。